胚盤胞移植
正常に受精した卵は、その後分割して胚になります。胚を子宮内に戻すことを胚移植といい、採卵後5日目の胚盤胞で戻すことを胚盤胞移植といいます。
胚盤胞移植の長所
1胚の選別
初期胚はその時点でグレードが良くても、続く胚盤胞培養の結果、途中で発育が停止するものがでてきます。つまりグレードの良い初期胚移植を行った場合にも子宮内で同様なことが起こっている可能性があります。初期胚では形態的に同じでもその後の発育のスピードや形態の違いによって良好胚を選別できます。
参考:ヒトの胚は、受精後から4〜8細胞期まで主に母性由来の遺伝子により蛋白質合成を行っていますが、4〜8細胞期以降では胚自身の遺伝子が活性化し、蛋白質を合成するようになります。それに伴い胚の栄養要求性も大きく変化します。つまり8細胞期までの主なエネルギー源はピルビン酸と乳酸ですが、それ以降はグルコースが主なエネルギー源となります。この8細胞期というのが採卵後3日目にあたり、ここからグルコース濃度が高い培養液に変更することで、胚自身の遺伝子が胚の形態にも反映されることになります。
2理想的な移植環境
受精卵は、分裂を繰り返しながら卵管内を移動し、受精後5〜6日目に子宮に到達して胚盤胞の状態で着床します。従って卵管内にあるはずの初期胚を子宮内に移植する初期胚移植では、受精卵は非生理的な環境で着床まで過ごさなければならなくなります。逆に初期胚移植と違って、着床の準備が整った時期に胚盤胞を子宮内に移植することは、生理的であると考えます。
3多胎妊娠の防止
受精卵の移植数を増やせば妊娠率は上昇しますが、同時に多胎妊娠も増加します。着床率の高い胚盤胞移植では、移植数を1個に制限しても高い妊娠率が期待できます。
短所としては以下のことが考えられます。
1胚移植キャンセル
受精卵のうち胚盤胞に到達できる割合は30~40%に留まるため、受精卵が少ない場合は胚盤胞に到達できず、移植キャンセルとなる可能性があります。
2未完成な培養技術
以前に比べ培養液の組成を変えることで胚盤胞到達率は画期的に高くなりましたが、生体内に比べると最適とはいえず、まだ改良の余地があります。
3一卵性双胎
胚盤胞移植により一卵性双胎の可能性が増えたとの報告がなされています。これは胚を1個しか移植しなくても、それが何らかの原因で分離して二つの胚になることがあるためです。一卵性双胎では、双胎間輸血症候群や分娩中のリスクなど二卵性双胎に比し様々なトラブルが起こりえます。胚盤胞移植が導入された時には、このような事態は予測されておらず、今後さらなる検証が必要であると思われます。
受精卵は卵管内で2細胞→4細胞→8細胞と分割を繰り返しながら桑実胚を経て胚盤胞と呼ばれる時期に子宮に到達し透明帯から出たあと着床します。そのことからも、胚盤胞移植は生理的に自然な時期に子宮に戻すことができる理想的な移植環境になります。
体外での培養環境の改善により、胚盤胞まで育てることが可能となりました。そのため、長期間培養することで、胚が最終段階(胚盤胞)まできちんと発育するかどうかを確認することが可能です。また、形態的に最も良い胚を選別でき、胚と子宮内膜との同期化(胚が着床するために最適な時期)を図ることができます。


